転職・・・昔と今

これはイギリスの'諺'(ことわざ)(proverb)である:

 A rolling stone gathers no moss. (転石は苔を生ぜず)

イギリスでは、この諺は一般的に否定的な意味に解釈される・・・仕事が定まらず、職業を点々と変える人には金が身につかない・・・一方、アメリカでは真逆・・・歴史的に、西部開拓時代から移動を繰り返す民族・・・よりよい環境を求め、日本の約25倍の面積を有する広大な土地を苦もなく(?)移動する・・・無論、肯定的な意味である。

さて、日本はどうか・・・?「アメリカ型」or「イギリス型」?・・・私の感覚では、つい最近までは「イギリス型」だったように思う・・・(転がる石のように)仕事をコロコロと変えてばかりいたら信用をなくすよ・・・'石の上にも三年'・・・転職ばかりしていないで、少しは辛抱して同じ所で働きなさい・・・などと。

しかしながら、日本も昨今の不安定な経済状況に加え、特に所謂「新型コロナ」以降、IT環境の変化・・・テレワークの定着やネット社会の拡大など、社会環境が大きく変化・・・働き方も、随分と変わったようだ・・・優秀な人は、ステップアップを目指し転職する・・・職場環境の合わない人は、見切りが早く転職する・・・先行き不安で不透明な社会は、それを後押しするかのようである・・・毎日のように、テレビCMやインターネットで、'転職'の二文字が躍る・・・今の日本の状況を見ていると、諺の解釈は、明らかに「イギリス型」から「アメリカ型」へと変ったように思う・・・。

高度経済成長期の「終身雇用」、「年功序列」など・・・今は昔・・・それらの語句は'廃語'(obsolete word)に近い響きすらする・・・。知らんけど。

ハウスタケカの独り言でした。

漱石さんは、'うそつき'ではありません・・・

漱石に来客があった・・・その日は気分がすぐれず、誰にも会いたくなかったのか、お手伝いさんに"I'm not at home to anyone today".(今日はどなたも面会をお断りします。)と、来客に伝えるように言った。来客は、「漱石さんは'家にいない'(not at home)っておっしゃってますが、今奥の方で声が聞こえましたけど・・・」と、漱石の居留守を使う'うそつき'呼ばわりが世間に広まった、という・・・。

漱石は'うそつき'なんかではありません・・・来客は、'not at home to ...'(・・・に対して家にいない ⇒ ・・・に会わない)の言い回しが理解できなかったのです・・・'at home to ・・・'は'ready to receive and welcome'(・・・を歓待する用意のある)『オックスフォード英英辞典』の意味である。例文を二つ挙げておく:

We are always at home to her.『ランダムハウス英和大辞典』
(私たちはいつでも喜んで彼女を迎えます。)
She took to her room and was not at home to friends.『オックスフォード英英辞典』(彼女は自分の部屋が好きになって、友達を招き入れなかった。)

真偽のほどは分からない・・・1900年(明治33年)文部省の第1回給付留学生として、英国に派遣された夏目漱石(*備考)ならではの逸話(anecdote)ではないでしょうか?・・・知らんけど。

ハウスタケカの独り言でした。

*備考:「夏目漱石ブログ」(2023年2月4日)

阪神「アレ」(優勝)・・・おめでとう!!

阪神タイガース、優勝おめでとう!!

岡田彰布監督は、決して優勝の二文字を使わず、「アレ」で通した・・・今年は絶対「アレ」をやりますよ・・・「アレ」を期待してください、というふうに・・・。

「・・・オリックス・バッファローズ監督時代、交流戦で選手が優勝を意識し過ぎないよう言い換えたのが始まり・・・「アレ」に因み、球団のスローガンも今季、「A.R.E.」を掲げた。明確な目標(Aim)を目指して、野球への敬いの気持ち(Respect)で取り組み、さらにパワーアップ(Empower)する、というのが岡田流とか・・・」(『京都新聞』2023 / 9 / 8)

ところで、「コ・ソ・ア・ド'縄張り理論'」(*備考)というものがある・・・この理論を使って、岡田監督の深層心理を探ってみたい・・・これは日本語の'話し手'(addresser)と'聞き手'(addressee)が支配する'縄張り'のことである(私は'縄張り'より'領域'の方を好む、以下'領域'とする):

コ系 ―「これ」などは、〈話し手の領域〉の中のものを指示
ソ系 ―「それ」などは、〈聞き手の領域〉の中のものを指示
ア系 ―「あれ」などは、〈話し手と聞き手双方の領域〉の外のものを指示
ド系 ― 領域を問わず、不定の指示物について用いられる

岡田監督は、優勝という言葉を使わずに「アレ」と表現・・・「アレ」とは、話し手(岡田監督自身)と聞き手(選手)双方の領域の外にあるものだが、具体的に優勝のことを指しているのは明らか・・・優勝を意識しないように、話し手(監督)・聞き手(選手)の領域の外にある「アレ」の表現を使った監督の心理作戦が功を奏した形・・・この場合、もちろん「コレ」や「ソレ」では意味不明である。

優勝を第三者的な存在に置いた岡田監督の「アレ」・・・結果、「言葉の選択」は的確で、選手の心をうまくつかんだ、と言えそうである・・・。知らんけど。

ハウスタケカの独り言でした。

*備考:安藤貞雄『英語の論理・日本語の論理』(大修館)


'デマ'(偽情報)と'誤報'

ちょうど100年前、1923年(大正12年)9月1日午前11時58分・・・関東大震災発生、マグニチュード7.9、死者・行方不明者は、10万5000人・・・未曾有の大惨事となった。

地震の揺れや火災と並んで、人々を恐怖に陥れたもの・・・それは、'デマ'だったと言われる・・・富士山が大爆発して噴火中だとか、東京湾に巨大津波が押し寄せるとか、市内の井戸に毒薬を入れた・・・などなど。特に、大きな災害時には、'デマ'や根拠のない曖昧な情報が飛び交うことが多い・・・それらを流したり拡散させたり、またそれらを安易に信じたりしないことが大切ですよね・・・。

ところで、'デマ'(偽(にせ)情報)と'誤報'は違う:

'誤報'は、間違って事実と違うことを知らせることで、そこには意図や思惑は全くない・・・英語で、'misinformation'と言う。

'デマ'はドイツ語'Demagogie'(デマゴギー)の略で、意図的に流す根拠のない偽(にせ)情報、流言蜚(飛)語(りゅうげんひご)・・・、英語で、'disinformation'と言う。

100年前とは異なり、今はネット情報化の時代・・・日々、膨大な情報が飛び交い、人々はありとあらゆる情報にさらされている・・・そんな環境の中、私達は情報をきちんと選別し、賢く取捨選択するそれなりの学習能力を身につけていて、昔ほど'デマ'に振り回されることがないのかもしれない・・・しかし、最近は'AI'(Artificial Intelligence, 人工知能)の登場で、デマも益々、巧妙になっているようだ・・・。知らんけど。  

ハウスタケカの独り言でした。

標高4303mの'パイクス-ピーク'に登る!

えっ!・・・富士山(3776m)より高い'パイクス-ピーク'(Pikes Peak、4303m)に登ったって?!・・・はい、でも実は・・・自力ではなく、列車の歯車とのこぎりのようなレールがかみ合って動くアプト式ディーゼル登山鉄道で・・・10数キロの頂上駅まで、勾配のある線路をゆっくりと約1時間半・・・森林限界と言われる3500mぐらいを越えると、緑色だった景色は、徐々に灰色の花崗岩へと変わっていく・・・むき出しの岩肌にへばりつく大きな岩石が、今にも落ちてきそうに迫ってくる・・・世界一標高の高い鉄道駅は、チベットにあるタングラ駅(5068m)だそうだ!・・・パイクス-ピークの山頂駅はそれに次ぐ高さかも・・・?

ところで、'パイクス-ピーク'の山はどこにあるかって?!・・・あっ、これは失礼しました・・・本末転倒!!(英語で'put the cart before the horse'と言うが、馬車の'馬'(horse)と'荷車'(cart)の位置関係を引き合いに出す英語の発想は面白い!)・・・場所は、先に言うべきでした。

実は、アメリカコロラド州西方のロッキー山脈にある山・・・コロラド州は高地にあり、州の平均標高は2000mを越え、全米で一番高いとか・・・州都デンバーは、標高1マイル( 約1600m)あり別名'Mile-High City'と呼ばれる・・・余談だが、デンバーにはメジャーリーグ、コロラド-ロッキーズの本拠地があるが、ホームランがよく出るので、ピッチャー泣かせの球場として有名だとか・・・

パイクス-ピーク登山鉄道は、州のほぼ中央部にあるコロラド-スプリングズ(Colorado Springs)を起点とする・・・山頂から見るロッキー山脈の眺望は雄大で、眼下にはコロラドスプリングズの街が広がる・・・頂上の空気は薄くて息苦しさを感じ、長居はできなかった・・・。

ハウスタケカの独り言でした。

写真出典:Wikipedia
写真出典:www.cntraveler.com

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